• HOME
  • BLOG
  • ART
  • 【ARTレビュー】「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」ダイナミズムの背景にある遊び心と膨大な思考プロセス

【ARTレビュー】「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」ダイナミズムの背景にある遊び心と膨大な思考プロセス

六本木森アーツセンターギャラリーで開催中のバスキア展に行ってきました。

わずか10年間の活動期間に3000点のドローイングと1000点以上の絵画作品を残し、27歳でこの世を去った若き天才として知られています。

バスキアについての詳しい情報はバスキア展のウェブサイトや検索で知ることができますので、個人的に感じたことなどをレビューしたいと思います。

描くことへの抵抗や摩擦が一切感じられない表現

今回のバスキア展へは予備知識ほぼゼロで向かいましたが、まずはじめに感じたことは子供のような自由なタッチで、大きなキャンバスに躊躇なく描きなぐれることのすごさでした。

130展もの作品が並び、いくつもの作品を観ているうちに、ダイナミックな表現の背景にある力強さの理由が見えてきました。

「アーティスト」として外からの評価ではなく、内から湧き上がるものへの不動の信頼感があったのではないかと思います。

ドローイングが特別な作品つくりなどではなく日常であり、生きることを実感する手応えのように感じていたのではないか。まるで呼吸するように描いている。そんな印象でした。

アウトプットに対する抵抗や摩擦は、他者の評価や厳しい自己評価によって生まれます。バスキアの絵にはそのどちらの評価にも毒されない強さがありました。

作品に主導権を奪われていないことのすごさ

多くのアーティストにとって「アーティストとしての自意識」との闘いは大きな葛藤の要因でもあります。

どんな作品をつくるのか、納得できるものを生み出しつづけることができるのか。作品に対する納得やスキル、完成度に意識を奪われることも少なくありません。しかしバスキアには「アーティストとしての自意識」よりももっと根本的な、人としての存在意義に関する葛藤のほうが強かったのではないかと感じました。

「黒人アーティスト」というレッテルを嫌っていたバスキアにとって、表現者としての自分よりも、一人の人間としてのアイデンティティについて考えることのほうがより多かったのではないか。

だからこそ、作品に主導権を奪われず、自分の考えやスタンスをダイレクトに表現するスタイルが確立されたのだろうと想像しました。

圧倒的な思考量と言語化量

筆やペンの運び、コラージュの配置、キャンバスの使い方などに一切の迷いがなく、実にダイナミック。

その自由な表現の背景にあるのは、膨大な思考と言語化のプロセスだったのだと思います。

展示室の奥に進んでいくと、バスキアが書き記した文字が並ぶノートが展示されています。

展示室の中央に太い柱を立てるように、天井まで続く4つの壁面にびっしりと、言葉で埋められたノートが1ページずつ敷き詰められています。

まるでバスキアの表現の中核にあるロジックを思わせるような展示スタイルのセンスの良さを感じながら、数千もの作品を生み出した背景にある膨大な思考と言葉を目の当たりにしました。

作品の中にもたくさんの言語表現が登場します。暗号のように散りばめられた単語やアルファベットもあれば、文章もあります。考え尽くされ、言葉に変換された思想という土台があったからこそ、自由でダイナミックな躊躇のない表現が実現したのだと考えられます。

思想と表現スタイルの合致がかっこいい

バスキアの絵画の多くが無骨に打ち付けた木枠にキャンバスを大胆に張ったものをベースにしています。キャンバスがよれたり歪んだりするのも、バスキアの思想やストリートカルチャーや日常のなかにあらわれる生命力を感じさせます。

スタイルだけを真似ても到底かっこよくはならない…思想と表現スタイルが一致してこそのかっこよさ。

内面にあるものがあふれてそのまま隆起したような表現に、完全なるオリジナリティを感じます。

作品はアーティストの分身。子ども。魂の細胞分裂。生々しい精神から生まれたものが、様式美よりもはるかに強烈にひとの心に刺さる、生命力の強さや美しさを感じさせます。

すべての価値基準を軽やかに覆す子どものような表現。

楽しみながらもその奥には、深い葛藤と強い意志が感じられ、死生観にも似たシリアスさと遊び心が混じり合い、観るものを純化する力があるのだと思いました。そしてなにより、単純にかっこいい!グッズもかなり充実していて本当に楽しめます。「バスキア展メイド・イン・ジャパン」おすすめです。

 

「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」

六本木森アーツギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)

開催期間:2019年9月21日〜11月17日

当日券購入の場合、平日で30〜50分待ちでしたので前売り券購入がおすすめです。

おすすめ記事:

美術館を10倍楽しむための4つのポイント 

関連記事一覧